[本棚]――[書籍]――[第25回]――[化学・意表を突かれる身近な疑問]

化学・意表を突かれる身近な疑問―昆布はなんでダシが海水に溶け出さないの?の画像
化学・意表を突かれる身近な疑問―昆布はなんでダシが海水に溶け出さないの?
日本化学会


ISBN:4062573369

日常生活の現象を凡そ高校レベルの化學内に留めて親子の對話形式で解説なさっている本です。
親子の對話形式を取ったのは、矢張りこの本が子供が問うてくる質問に答えたい親を想定しているのでしょうが……。
しかし、恐るべきは全て一貫して化學現象の解説が文章のみということです。
必要に應じて適宜圖解をなさった方がより良い本になったに違いありません……。

形式の不満はさておき、實際のところ、自分の學んできたことが如何に虚學とさして變わらなかったかを認識させられましたよ。
本來の化學を見失って、数値計算・暗記許りに固執し雁字搦めになっていたことか、と……。
恐らく、80あった事例の中で車の電着塗装と雪道への塩撒きくらいしか説明できなかったと思います。
例えば、海藻に砒素が海水の何千倍の濃度で含まれているのにも関わらず、食べても平氣なのかとか説明出來ません……。
そもそも、「O型の人の血液は誰にでも輸血できる」とか「肌の美白のために鶯の糞を塗る」とかいう既知のこととして扱われている事項さえも知らないことが多く……(汗。
これらの現象も説明出來ずに理系を名乘るなんておこがましいことこの上ないですよね、普通に悔しいです。


現實の生活に役立たないものは學問ではない、と屡ば言われますが……
極論、今やっている高校の化學も心がけ次第なのではないでしょうか。
即ち、今周りの現象に何ら疑問を抱かないのが惡いのです。
周りの現象があたりまえに思えて(實際は何も知らないのに)何ら疑問を抱かない、今の現状に満足している状況です。
ショーペンハウエルが満足とは欲が生じない状態と仰っていたように記憶していますが……自分には知識欲が見事に失われていますね。


そういう譯で、快哉を叫ぶ程ではないですが叫びかけました(何。
父親と母親が凡そ交互に息子と娘に現象を化學的に説明していたので、どれだけそこのご兩親は化學に通暁しているのだろうとツッコミながら……(;つД`)
でも、或る意味そんな家族になれれば一種の理想かもしれません(ぇ。
とはいえ、例えば、子供がジュースビンの周りに水滴がつくのを見て「ジュースが汗をかいてる」と言うのに躊躇わず容認出來るような感性も欲しいですが……。