[本棚]――[書籍]――[第26回]――[有夫恋―おっとあるおんなのこい]


有夫恋の画像
有夫恋
時実 新子



ISBN: 4022557974

当時は話題を呼んだらしい歌集です。
とはいっても、朝日新聞社出版の方でも87年とかだから自分がそれを知る由がないですけどね(ぉ。


作品名にもなっているように「不倫・浮気」の詩なのでしょうね。


夫を愛せない刑罰は何ですか
あの人を思いこの人見ています

以上の様な作品もありますし。
とはいえ、テーマとは別に、一部の詩が過激過ぎるというか謎過ぎるというか……


獣姦求む急いで森の奥へ来よ
獣姦輪姦強姦この身まだ美し

こういう詩はその真意に悩みます。
個人的に、あまりインパクト狙いなのは、ピストルを撃って皆を驚かすようなものにしか受け取れないですね……
だからこそ、センセーションを巻き起こせましょうが。
と、文句ばっかり申し上げても仕方ないですので気に入った詩を何個か紹介させて頂きます。
以下、自分の陋見をお許し下さい。


掌の中に響き鳴く蝉握りしめ
手の蛍握りつぶせば死ぬけれど
百匹の蛍を握りつぶすかな

……マニアックかもですが、プラトゥリの『May Day』なんかを思い出してしまいます(何。
手の中に虫を閉じ込める詩が多いように感じました(というより、実際に数えたところ3つもあるのですが)。
流石に、田舎育ちの自分でも握り潰して殺すことは殆どしなかった筈ですが……
共通するのは、虫の体液が手にこびり付く生々しさ、というものなのでしょうかね。




飛行機の昇る角度は恋に似る
飛行機の降りる角度は愛に似る

難解です。
どなたかご教授願いますorz
恋の方がプラスで、愛の方がマイナスのように感じてしまいますが……




起きて寝て 芋虫ならば蝶になる

起きて寝て人間ならば……?




絶望へ明るい車内アナウンス
落ちつけ落ちつけまずは茶碗を洗うこと

人間が生きるということ、を示唆しているように見受け取れました。
縦い自分がどれだけ負の感情に占められていようと、まずは自分は生活をせねばなりません。
生きるというのは、そういう面で、酷ですよね……




困らせて泣かせてみたいそれも愛
さようなら心をこめて怨こめて
ころしてよ頸に冷たい手を巻いてよ

ここら辺もコメントし難いので敢えてしませんが……好印象を受けた詩です。




死ぬほどの思いも逢えばあっけなし
別れてのこの解放感何だろう

眼は節穴 だから他人は大好きだ

恋愛というものの実体の無さ、及びに盲目的なことを詠ってらっしゃいますね。





生んだ覚えのある子が敵になってゆく

これなんか自分が反抗期の子供を持った時に凄く共感できそうな詩です(笑。





不倫や浮気は常にマイナスのイメージが付き纏います。
が、この詩が詠っておられるように(と自分が勝手に解釈しているのですが)、法なんかに縛られないのが恋愛というものということには同意出来ます。
この方は17歳で嫁いだそうですから……特にそう感じたのでしょうね。

常々疑問に思うのですが、例えば、二股をかけることの何処がいけないのでしょうか。
実際、一人と付き合うよりは同時に数人と付き合った方が良いと思うのです。
恋愛は↑の詩でもありましたように、間違いなく盲目的です。
一人だけと付き合ってその人がかけがえない人と思っているようでは、謬を犯します。
人は絶対的評価は出来ないからこそ、何人かと同時に付き合って相対評価を下すべきだと思うのですが……。
出来るだけ多くの人と付き合った方が良いのは確かではないでしょうか、経験は多ければ多いほど良いでしょう。
そして、一番重要なことには、天下泰平の世といえど、何時なくなるとも知れない位人間は儚いのですから……

……と、『有夫恋』の作者の方の恋愛感に触発されてかなり歪んだ内容になってますが(ぉ。
でも、そう感じるならばそれは現在の日本の教育の産物に他ならないと思いますよ(何。
そもそも昔は日本ですら多夫多妻ぽかったではないでしょうか……
そういう訳で、少なくとも今の自分ならばきっと二股は気兼ねなくするでしょうし、仮に二股されてもなんとも思わないでしょう。
二股といえど、相手へ(orから)の思いされあれば良いのではないでしょうか?

とはいえ、自分自身が大したことないですし、今は人と接触する機会もないですから、ほぼ無縁なことについて語ってしまった訳ですけどね……(´・ω・)
とりあえず、現在の恋愛感だけを……(死。